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第118号 なぜ、抱っこひものSG基準は海外の基準よりも厳しいのか?

抱っこひもの歴史は古く、かつてはおぶいひも、子守帯、兵児帯(へこおび)と呼ばれて、おんぶをしたり、子どもを横に寝かして前に抱く使い方が主流でした。抱っこひものSG基準は1976年、製品安全協会の発足後3年後に制定されたもので、長い歴史があります。製品が進化し、使い方も変化するのに対応しながらSG基準は改正を重ねてきました。

近年の抱っこひもは子どもを前に抱くように使用するものが一般的です。親が子どもの様子を見ることができるメリットがありますが、前かがみの姿勢をとったときに子どもが落ちやすいというリスクがあります。座っている生活から立っている生活時間が長くなり、床が畳から板やタイルへと固いものに変わり、通路や道路も土からアスファルトやコンクリートへと変わっていく中で、子どもが落ちた際に従来以上に重篤な事故となることがあり、それが社会問題化しました。

2014年、東京都商品等安全対策協議会が、抱っこひも等の事故を分析し、安全対策を提言しました。それによると、2009年から2014年6月までの5年半の期間に、抱っこひも等からの子どもの転落事故が117件発生し、うち、頭がい骨骨折等、入院を要する重傷事例が27件も起きています。また、乳幼児をもつ保護者3000人を対象とした調査において、約1割の人が、抱っこひも等から子どもが転落したり、転落しそうになった経験があったとのことでした。また、使用者がバックルの留め忘れに気づかなかった事例なども明らかにされました。このため、提言にはSG基準の強化が含まれました。

これを受けて、SG基準が強化され、海外の基準よりも厳しく、バックルが1つ外れていても子どもが落ちにくい構造を求めることとなりました。SG基準を満たすために、これまで海外の基準に適応していた製品の設計を変更して対応された事業者もいます。

最近は、ネット通販で海外の製品が国内市場に出回ることが多くなりましたが、そのような製品はSG基準のように日本国内で期待される安全性に応えるものとなっているかはわかりません。どのような基準に適合しているかなど、安全性には十分にご注意され、製品をお求めになるようにしてください。

2024年度